Aさん(仮名・31歳女性・京都府・アパレル事務・独身一人暮らし)から届いた話。
Amazon物販スクールに120万円。6か月間のオンラインプログラム、卒業時の売上はゼロ。
「『卒業』という言葉が、ここまで虚しいとは、思いませんでした」。取材冒頭、Aさんはそう前置きをした。
アパレル事務、京都での一人暮らし
Aさんは、京都市内のアパレル会社で事務職を6年。年収は約350万円、独身、一人暮らし。実家は岡山県、両親と妹が一人。
「現在の仕事に大きな不満はなかったんです。ただ、30代になって、副業で月10万円くらい収入を増やせたら、と考え始めていました」
Instagram広告、『主婦でも月50万円』
2024年の秋。Aさんは、Instagramのおすすめ広告で、Amazon物販スクールの案内を見つけた。
キャッチは、「Amazon物販・主婦でも月50万円・1日2時間から」。動画には、30代の女性が登場、自宅のリビングでスマホを操作している姿だった。
「『主婦でも月50万円』という訴求が、自分にも当てはまる気がしました。1日2時間なら、平日の夜と週末で確保できる」
無料説明会、講師は『元会社員』
Aさんは、Zoom無料説明会に参加。参加者は約40名、20〜40代の女性が中心、Aさんと同年代が多かった。
講師は40代男性、「元会社員のAmazon物販プレイヤー」を自称。スーツ姿、丁寧な敬語、月収300万円の収益スクショを画面共有した。
「『自分でも、3年前は会社員でした』という親近感が、印象的でした。会場の女性参加者も、皆、熱心に聞いていた」
120万円、銀行融資
説明会の最後、有料スクール6か月コース、120万円が提示された。
「Amazon物販の仕入れ・出品・在庫管理・広告運用の全てを学べる、卒業後の収益サポート付き」
Aさんは、その場では即決せず、3日間考えた。最終的に、銀行系のフリーローン経由で120万円を借入、スクールに申込んだ。
「貯金も使い切る形で、銀行ローンも組んだ。退路を断つことで、本気で取り組める、と自分に言い聞かせました」
6か月プログラム、Zoom録画24本+週1の質問会
プログラムの中身は、Zoom録画24本(各60分)、PDF教材200ページ、週1回のZoom質問会、運営LINEでの個別質問対応。
内容は、Amazon物販の基礎、仕入れ先の紹介、出品作業のテンプレート、広告運用の基本。体系的に組まれていた。Aさんは平日夜2時間、週末は4時間ずつ、合計週14時間を割いた。
仕入れ20点、Amazon出品、売上ゼロ
プログラム3か月目、Aさんは初めて商品を仕入れた。教材で推奨された海外仕入れサイト経由、合計20点、仕入れ額は約30万円。
Amazon FBA経由で出品。3か月待っても、売上はゼロだった。
「商品の写真、商品説明、価格設定、広告設定──全て教材通りにやったはずです。それでも、まったく売れなかった」
運営LINE、『あなたのやり方が悪い』
Aさんが運営LINEで状況を相談すると、返ってきた回答は、こうだった。
「あなたの広告予算設定が低いです、もっと攻めましょう」
「商品リサーチの精度を上げてください、もっと深く読み込んで」
具体的な改善指示はなく、抽象的な励ましの繰り返し。Aさんが「具体的に、どの商品がダメだったか」と質問しても、テンプレ返信が続いた。
6か月修了、累計赤字150万円
プログラム修了時、Aさんの累計収支は、こうだった。
スクール代120万円、仕入れ代30万円、Amazon出品手数料・広告費・FBA手数料が合計約20万円、売上ゼロ。累計赤字は約170万円。
銀行ローン120万円の返済が、月3万円ずつ、48回。給与の約10%が、毎月の返済に消える。
「『卒業しました』という言葉が、こんなに虚しいとは思いませんでした。何も得ていないのに、修了証だけが届いた」
京都府消費生活センターへの相談
Aさんは、京都府消費生活センターに相談。特商法不実告知のルートで、現在交渉中。返金見込みは約20万円前後。
「『主婦でも月50万円』というキャッチに反応した自分も悪い、というのは認めます。ただ、教材通りにやって売上ゼロ、運営の質問対応もテンプレ──この構造自体が、虚偽広告に該当する可能性がある、と弁護士から説明を受けました」
取材の最後に、Aさんが残した言葉
「これから副業で物販を始めようとしている方に伝えたい。『主婦でも月◯◯万』『1日◯時間から』のキャッチで集客するスクールは、構造的に再現性が低い。120万円払う前に、まず1万円分の自己資金で、メルカリやヤフオクで5〜10点を出品してみてください。それで月1万円の利益を出せないなら、月50万円は、ほぼ実現不可能です」
振り返り:3つの教訓
1. 『主婦でも月◯◯万』『1日◯時間から』のキャッチは、初心者の警戒を緩めるための定型表現。物販の収益化は、相場観・仕入れ判断・需要予測の経験が必要で、誰でも再現できる仕組みではない。
2. 高額スクールに申込む前に、自己資金1万円で5〜10点を出品して試す。それで利益を出せないなら、スクール費用を払っても結果は同じだ。
3. 銀行ローン経由でのスクール申込みは、退路を断つどころか損失を倍化させる構造。本業の安定収入を圧迫し、副業のプレッシャーが逆に高まる。