Qさん(仮名・21歳男性・東京都・私立大学3年生)から届いた話。
X DM経由のLINE副業入門教材に8万円。バイト代3か月分。期末試験前夜、図書館から帰った後の出来事だった。
「『大学生向け』というキャッチに、本気で反応してしまいました」。取材冒頭、Qさんはそう振り返った。
大学3年、コンビニバイトと授業の日々
Qさんは、都内の私立大学3年生。実家暮らし、両親と。コンビニのアルバイトで月収約6万円、就活前の貯金を意識し始めた時期だった。
「就活が近づいて、自分の経済的な自立を考えるようになりました。バイト代だけじゃ、将来の独り暮らし費用は心許ない、と」
そんな時期、XのDMに、1通の案内が届いた。
『大学生向け・LINEコピペで月3万・スマホ完結』
X DMの送信者は、20代男性を自称する別のアカウント。プロフィールには「元大学生フリーランス」とだけ書かれていた。
DMの内容は、こうだった。
「大学生向け・LINEコピペで月3万・スマホ完結・初心者OK」
「『大学生向け』『月3万』──この組み合わせが、自分にちょうど良いラインだと感じました。月10万・月100万なら警戒したと思います」
Zoom無料セミナー、カウントダウン特典
Qさんは、無料セミナーに参加。Zoomで90分、参加者は約30名、年齢層は10代後半〜20代前半が中心だった。
「セミナーの最後の20分が、急に販売パートに切り替わりました。『今だけ7,000円OFF』『先着10名限定』──カウントダウン付き」
Qさんは、その夜のうちに申し込みボタンを押した。教材費79,800円、バイト代3か月分。
2025年12月22日、夜中の振込
送金は、Qさんが自室の布団に入ってからのスマホ操作。23時、振込手数料330円を含めて100,330円の決済。
「PayPay銀行のアプリで、指紋認証を3回失敗してから、ようやく成功しました。あの瞬間、何かが引っかかっていたのかもしれない」
母親には、「教科書代」とだけ説明。半年間、本当のことは話せなかった。
教材が届いた日、最初の3ページで違和感
送られてきた教材は、Googleドキュメント30ページ。SNS投稿テンプレート集と、コピペ例文の羅列だった。
「最初の3ページを読んで、すでに違和感がありました。5ページ目で、『これ、似たnote記事を見たことがある』と気付いた」
Qさんは、教材の章タイトルを15個、Google検索にかけてみた。12個が、無料公開されているnote記事と一致。残り3個も、YouTube動画で網羅されている内容だった。
運営アカウント、1か月後に削除
教材購入から1か月後。X上の運営アカウントと、勧誘元のLINEオプチャが、突然削除された。返金要求の連絡先も、消えた。
「『あの教材は無料公開されている情報の再構成だ』と気付いた頃に、運営も消えた。タイミングが、たぶん、意図的でした」
母親に告白した日
半年後。Qさんは、母親に8万円の損失を告白。
「母親は、最初に『なぜ早く相談しなかったの』と聞きました。私が答えに詰まったら、母親が『お金は返ってこないかもしれないけど、勉強代だと思いなさい』と」
母親は1週間前に、たまたま『副業に騙されないでね』とQさんに言っていたタイミングだった。それが、Qさんが半年間、相談できなかった理由でもあった。
消費生活センターへの相談、現在対応中
Qさんは、東京都消費生活総合センターに相談。事案番号付きで対応中、約2万円の返金で和解の方向。
「金額の問題じゃないんです。バイト代3か月分が消えた事実が、就活前の自信に響いている。あの3か月を、他のことに使えていたら、と」
取材の最後に、Qさんが伝えたかったこと
「同世代の大学生に、特に伝えたい。『大学生向け』『コピペで稼げる』『スマホ完結』──このキャッチで案内が来たら、その時点で警戒してください。バイト代を消す前に、必ず家族か、関係のない第三者に相談してください。母親に1週間前に言われていた言葉を、私は聞き流してしまった。あの時、止めていれば、と何度も思います」
振り返り:3つの教訓
1. 『大学生向け』『コピペで稼げる』『スマホ完結』のキャッチは、若年層をターゲットにした典型的な手口。月3万円という『現実的に見える金額』設定が、警戒の入り口を緩める。
2. 教材を購入する前に、章タイトルや見出しをGoogle検索で確認する。多くの『有料教材』は、無料公開情報の再構成。検索で確認するだけで、購入の必要性が見えてくる。
3. セミナー終盤のカウントダウン特典は、家族に相談する時間を奪う設計。即決を促されたら、その時点で警戒シグナルとして認識する。